Perl基礎入門

第4章ハッシュ変数

4-1. ハッシュ変数とは

ハッシュとは、連想配列とも呼ばれ、「キー」と「値」を1組のペアとして関連付けされた配列です。ただし、配列自体は順序付けされていないところに特徴があります。

ハッシュの変数のことを、ハッシュ変数といい、% (パーセント) + 英字1文字から始まり、それ以降は数字、英字およびアンダースコア ( _ ) を用いることができます。また大文字と小文字が区別されますので、たとえば %a と %A は別物として扱われます。

4-2. ハッシュ変数の操作

ハッシュ変数は、キーと値をペアにして、数値や文字列を代入します。

`1`	`%fruit` `= ("red"` `=>` `"apple",` `"yellow"` `=>` `"banana");`

上記の場合、red（キー）とapple（値）というペアと、yellow（キー）とbanana（値）というペアを、それぞれ%fruitに代入します。

ハッシュ変数の中の各要素（各ペア）は、$ハッシュ変数名 { キー } という形式で、それに対応する「値」を参照することができます。
したがって、前述の%fruitは、以下のように記述することもできます。

`1`	`$fruit{"red"} =` `"apple";`

`2`	`$fruit{"yellow"} =` `"banana";`

ハッシュ変数の各要素には、「キー」を指定することで「値」にアクセスすることができます。

`1`	`%fruit` `= ("red"` `=>` `"apple",` `"yellow"` `=>` `"banana",` `"purple"` `=>` `"grape");`

`2`	`print` `"$fruit{'red'}\n";`

1 > apple

ちなみに、「キー」の文字列が全て「英数字・アンダースコア」の場合には、クォーテーションによる括りを省略しても構いません。ちょっとしたことですが、結構便利です。

1# キーのクォーテーションを省略した例-1
2%fruit = (red => "apple", yellow => "banana", purple => "grape");
3 
4# キーのクォーテーションを省略した例-2
5print "$fruit{red}\n";

4-3. ハッシュ関数

ハッシュを操作するための関数として、次のような関数が用意されています。

関数	内容
keys	すべてのキーを取り出す
values	すべての値を取り出す
each	1組のキーと値を取り出す
delete	特定の要素を取り除く

1. keys

すべての「キー」を取り出します。
ただし、取り出された配列の順序は一定でないことに注意します。これはハッシュが順序付けられた配列ではないためです。

1%fruit = (red => "apple", yellow => "banana", purple => "grape");
2@file = keys %fruit;
3 
4print "@file\n";

`1`	`> purple yellow red`

2. values

すべての「値」を取り出します。
keys関数同様、取り出された配列の順序は一定ではありません。

1%fruit = (red => "apple", yellow => "banana", purple => "grape");
2@file = values %fruit;
3 
4print "@file\n";

`1`	`> grape banana apple`

3. each

1組の「キー」と「値」を取り出します。

1%fruit = (red => "apple", yellow => "banana", purple => "grape");
2($key, $val) = each %fruit;
3 
4print "$key : $val\n";

`1`	`> purple : grape`

しかしながら、上記の場合、どのペアが取り出されるかが不定であり、しかも1組だけが抽出されるので、通常each関数の場合は次のようにwhile構文と併用した形で使用されます。

1%fruit = (red => "apple", yellow => "banana", purple => "grape");
2 
3# ハッシュの全要素を展開
4while ( my ($key, $val) = each %fruit ) {
5    print "$key : $val\n";
6}

1>  purple : grape
2>  yellow : banana
3>  red : apple

4. delete

特定の要素を取り除きます。
変数によるキーを指定することで、そのキーと値のペアをハッシュから削除します。

1%fruit = (red => "apple", yellow => "banana", purple => "grape");
2 
3# 要素を削除（yellow - banana の要素）
4delete $fruit{yellow};
5 
6# 残りの要素を全て展開
7while ( my ($key, $val) = each %fruit ) {
8        print "$key : $val\n";
9}

`1`	`> purple : grape`

`2`	`> red : apple`

ちなみに、上記のdelete関数は特定の要素を削除する場合ですが、全要素を削除する場合には、空リストを代入すると、全要素が削除されます。

`1`	`%fruit` `= ();`

ただし、上記の場合中身が空ですが、定義値のままです。もし、未定義値にしたい場合には、undef関数を使用します。

`1`	`undef` `%fruit;`

4-4. ハッシュスライス

配列変数に対する場合と同様に、ハッシュのスライスを使用すれば、各要素の集合にアクセスすることができます。

たとえば、次のようなメンバーの年齢データがあったとします。

`1`	`%age` `= (tom => 21, mike => 19, kent => 25, nancy => 17);`

これをスライスを使うと、次のように記述できます。先頭が、%ではなく@であることに注意してください。

`1`	`@age{ qw(tom mike kent nancy) } = (21,19,25,17);`

以下に、コード例で見てみましょう。
tomとmikeが今月誕生日を迎えました。年齢を更新してみましょう。

01use strict;
02 
03# 年齢データ
04my %age = (tom => 21, mike => 19, kent => 25, nancy => 17);
05 
06# tomとmikeを更新
07@age{ qw(tom mike) } = (22,20);
08 
09# データの中身を見る
10while ( my ($key, $val) = each %age ) {
11    print "$key : $val\n";
12}

1>  nancy : 17
2>  kent : 25
3>  tom : 22
4>  mike : 20

また、スライスを使うことで、任意の要素の値をリストとして取り出すこともできます。

01use strict;
02 
03# 年齢データ
04my %age = (tom => 21, mike => 19, kent => 25, nancy => 17);
05 
06# kentとnancyの年齢を取り出す
07my @data = @age{ qw(kent nancy) };
08 
09# リストの中身を見る
10print "@data\n";

1 > 25 17

4-5. ハッシュを代入順に並べる

ハッシュの配列は、順番どおりには並ばないことは前に述べました。
しかしながら、どうしてもキーや値を順番通りに取り出したい場合には、実はTie::IxHashモジュールを利用することで実現できます。
使い方によっては、大変便利なモジュールですので、ご紹介しておきます。

Tie::IxHashの使い方のポイントは、必ず対象のハッシュを呼び出す前に、tie関数で関連付けしておきます。

01use strict;
02use Tie::IxHash;
03 
04# %hashを関連付け
05tie ( my %hash, 'Tie::IxHash' );
06 
07# ハッシュに代入
08%hash = (
09        Sun => 0,
10        Mon => 1,
11        Tue => 2,
12        Wed => 3,
13    );
14 
15# 全要素を展開
16while( my ($key, $val) = each %hash ) {
17    print "$key : $val\n";
18}

1>  Sun : 0
2>  Mon : 1
3>  Tue : 2
4>  Wed : 3

上記のように、全てのキーと値を代入順に取り出すことができます。

ちなみに、Tie::IxHashモジュールは標準モジュールではありませんので、各自でインストールする必要があります。
ただし、PurePerl（すべてPerl言語で書かれたもの）のため、Perlライブラリ（jcode.pl, cgi-lib.pl等）のように、ホームディレクトリの中に置いて使用することが可能です。

参考 : 【コラム】Perlモジュールの組み込み

4-6. 多次元ハッシュ

ハッシュは、配列と同様に多次元に展開させることができます。ハッシュの中にハッシュを作ることができます。

以下のハッシュは、いわゆる二次元ハッシュになります。

1%hash = (
2    A => { a => 1, b => 2, c => 3 },
3    B => { d => 4, e => 5, f => 6 },
4);

波括弧（ブレース）の部分を、1つのスカラーと読み替えると、分かりやすいかもしれません。

%hashにおいて、キー「A」に対する値の中の最初のキー「a」の値「1」にアクセスするには、添字を使用して次のように記述することができます。

1%hash = (
2    A => { a => 1, b => 2, c => 3 },
3    B => { d => 4, e => 5, f => 6 },
4);
5 
6print "$hash{A}{a}\n";

1 > 1

リファレンスを使って、キー「A」に対する値（配列）を展開するには、次のように記述します。

1%hash = (
2    A => { a => 1, b => 2, c => 3 },
3    B => { d => 4, e => 5, f => 6 },
4);
5 
6while ( my ($key, $val) = each %{$hash{A}} ) {
7    print "$key : $val\n";
8}

1>  c : 3
2>  a : 1
3>  b : 2

%hashの中の全てのキーと値を展開するには、次のように記述します。

01%hash = (
02    A => { a => 1, b => 2, c => 3 },
03    B => { d => 4, e => 5, f => 6 },
04);
05 
06foreach my $tmp ( keys %hash ) {
07    while ( my ($key, $val) = each %{$hash{$tmp}} ) {
08        print "$key : $val\n";
09    }
10}

1>  c : 3
2>  a : 1
3>  b : 2
4>  e : 5
5>  d : 4
6>  f : 6

%hashに対して、二次元のキーと値をさらに追加してみましょう。

01%hash = (
02    A => { a => 1, b => 2, c => 3 },
03    B => { d => 4, e => 5, f => 6 },
04);
05 
06# キー「C」に対する二次元の値を追加
07$hash{C} = { g => 7, h => 8, i => 9 };
08 
09while ( my ($key, $val) = each %{$hash{C}} ) {
10    print "$key : $val\n";
11}

1>  h : 8
2>  g : 7
3>  i : 9

特定のキーに対する値に、要素を追加してみましょう。

01%hash = (
02    A => { a => 1, b => 2, c => 3 },
03    B => { d => 4, e => 5, f => 6 },
04);
05 
06# キー「A」に対する値に要素追加
07$hash{A}{x} = 7;
08 
09while ( my ($key, $val) = each %{$hash{A}} ) {
10    print "$key : $val\n";
11}

1>  c : 3
2>  a : 1
3>  b : 2
4>  x : 7